ビターチョコレート
次の日、俺は昼食をとる時、長野を呼び出した。
「なになに?慎一からお昼誘われるのって、初めてじゃない?」
長野は能天気な顔でニコニコして、オムライスを頼んだ。俺はソバを頼み、席に着く。
「慎一のお昼ごはんってヘルシーだね。」
「あんま濃いのは好きちゃうねん。」
「そんな事言って、辛いのとか好きなくせに。」
二人で和やかな会話をしていて、ふ、と気付く。
…ちゃうやん、俺はこんな話をしたいんじゃないねん!
「あのさ、この前も聞いたけど、瞳とは…どうなん?」
「……。」
さっきまで明るかった長野の顔が一瞬にして暗くなった。
…やっぱ、何かあんのかな。
「俺が、聞く話ちゃうか。悪いな。」
「いや、いいんだ…」
長野は何か、言いたそうにして、止めた。
「おまえ…」
止めたかと思ったら、口を開いた。
「瞳の事…好きなんだろ?」
「え?」
ドクン…と、鼓動がした。
長野が…まさか知っていたなんて。
「あの日、空港で偶然聞いてしまったんだ。…ごめん。」
「いや…長野が謝る事ちゃうよ。…まさか、それが原因か?」
胸の奥が痛くなる。俺が原因だったなんて、思いもしなかったから。
「いや、慎一に遠慮するとか、そうゆうんじゃないんだけど…帰ってきてからの慎一、なんか雰囲気変わってて…なんか、優しくなった。」
長野が笑うと、また話を続けた。
「お前、前はそんなんじゃなかっただろ?いつも横暴な事ばっか言ってさ、メール不精だし。…でも、今は違う。」
「それは…」
「それが瞳を思ってなら…って考えると、なんだか…」
長野は、それ以上言わなかった。