ビターチョコレート
★最終章☆
***千代子SIDE***
慎一さんに言えなかった…。ゆうちゃんの事。
自分で解決しなきゃいけないから。
私はゆうちゃんの家の前に立ち、インターホンに指を伸ばした。
―ピーンポーン…。
押すまでに10秒躊躇った。しばらくして、ゆうちゃんが門まで出てきた。
「千代子。なに?話って…って、あの事だよね?」
「…うん。」
「悪いけど、聞く気ないから。」
「す…っ、好きな人がいるの!」
そう言って、私はポケットから、慎一さんの写真をとり出した。
「…これが、その彼?」
「そう!この世で一番、かっこいいんだから!」
「…この人。」
…?知ってるの?
「おっ!千代子」
…し、慎一さん??
「ちょっとそこまで通ったから来てん。…あれ、お前…どっかで…」
慎一さんはゆうちゃんを見て何か難しい顔をした。会った事はあるけど、誰か思い出せないみたい。
「もしかして…慎一さんですか?」
「そうやけど……、あ!思い出した!慎二と修司のダチやろ?」
…え?慎二くんと修司の?
「そうですけど…、まさか千代子の彼氏だったなんて…千代子、お前…大丈夫か?」
「何が?」
「…千代子は、Mなのか。」
ゆうちゃんはボソリと呟いて、家の方に入っていった。
「…えっ!?ゆうちゃん。」
「あいつが“ゆうちゃん”か…。昔、ようイジメたなー。」
「え…。慎一さん、ゆうちゃんまでも…」
「そうそう。アイツん家、金持ちやろ?親出て来てモメてさー。ムカつくから家族ごとしばいたった。」
「………。」
「なんや?」
「な、なんでもありません…。」
慎一さんって…慎一さんって……分かってたけど、無茶苦茶だなあ…。
まあ、そゆうとこが好きなんだけど。
「じゃ、俺行くわ。」
「は、はい!お仕事頑張って下さいね!」
私がそう言うと、慎一さんは手を振ってその場を離れた。