ビターチョコレート
***慎一SIDE***
「武田警部補!お疲れ様でした!」
「おお、森川くん。おつかれさま~。あんまり頑張りすぎないようにね。」
駐車場で会った武田警部補に挨拶して、車に乗り込んだ。
♪♪~♪~♪♪~♪
ポケットに入れていた携帯の着信音が鳴る。相手は、長野だった。
「もしもし?」
俺はまだ少し気まずいと思いつつも、電話に出た。
『…慎一か?あのさ…今日、俺…瞳に返事したから。』
返事。それは…。
『好きだって、伝えたから。』
「マジか!ようやったな!」
自然に、笑みがこぼれた。嘘の無い、笑顔。俺はもう、本当に…瞳の事は諦めがついてるんだって実感した。
『慎一に、一番先に伝えようと思ってさ。』
「そっか。迷惑かけたみたいで悪いな。」
『いや、迷惑かけたのはこっちの方。…お前、本気で喜んでくれてたな。』
さすが、長い付き合いの友人ともなると、声だけで分かるみたいだ。
『あれは、いらない心配だったみたいだ。…千代子ちゃんと仲良くな。』
そう言って、電話が切れた。
♪♪~♪~♪♪~♪
…と、思ったらまた着信が鳴った。
「―はい?」
『あ、慎太郎?』
「変わっとるがな。…なんや。」
電話の相手はS女だった。
『瞳と長野さんの事…もう、聞いたわよね?』
「おお、ついさっき聞いた。」
『…そう、良かった。それと、お見合い解消の話つけといたから。』
「マジか!さんきゅう。」
『…ごめんね』
「?何でお前が謝るねん。」
『お見合いが私から持ち出したって話…本当なの。』
はい?
『慎一の事が好きだったのよ。…でも、千代子ちゃんがいるみたいだし?諦めてあげたの!』
「…初めて慎一って呼んだな。っていうか、何で告白しといて上から目線やねん!」
『ほ、ほっときなさいよ!用件はそれだけ!…じゃあね!』
ブツッ!、と音がして、電話が切れた。
…なんや、コイツは。俺はなんだか可笑しくなって、笑ってしまった。