ビターチョコレート
「慎一さーん!」


慎一さんの姿が見えたら、駆けていって、抱きつく。


「だから、イキナリ抱きつくなって言ってるやろ!」


大きな音が、私の頭の上で鳴った。グーで、頭を殴られた。


「い…いたい……。…って、そんなのどうでもいいんです!あのっ!私の父に、会ってください!」


「挨拶…?今日か?」


「はいっ!!」


「イキナリすぎるやろ!」


「あいたっ!?」


また、グーで殴られた。
痛いけど…手加減してる事は分かる痛さ。


「一旦家戻って、服着替えるわ!…行くで!」


「はいっ!」


そう言って歩きだす慎一さん。私もそれに着いていく。


「そや…忘れてた。」


「なんですか?」


慎一さんはポケットに手を入れた。


「…はい。」


「これ…。」


小さな、四角い箱。これはどう見ても…。



「僕と、結婚して下さい。」


いつも以上の、キリッとした顔で私を見て言った。
嘘…じゃないよね?自然と涙が溢れた。


「な、何で泣くねん!」


「だって…僕って…敬語って…」


「そんなに変か!?いや、だって普通、これが先やろ!」


珍しく、慎一さんが真っ赤になってる。


「変じゃないです!あえて言えば…その……“萌え”です!」


「…なんや、それ。」


慎一さんは笑った。
私も笑った。


慎一さんがまた歩いて、また立ち止まったかと思うと、視界が塞がれた。


…キス。


「…不意打ちです。」


真っ赤になるなる私を笑う、慎一さん。


…一生、着いていきます。慎一さん。
一生、貴方を愛します。





●END●




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