ビターチョコレート

慎一さんは、おかゆを食べたあと、
薬を飲んで布団に入りました。


「悪いな、もう大丈夫やから。」


「そうですか?じゃ、なんかあったら呼んでくださいね」


「おお、ありがと」


し…慎一さんに『ありがとう』って言われるなんて!!
私は顔が赤くなった。その後、静かに玄関のドアを閉め、慎一さんの家を後にした。


少しでも、慎一さんの役に立てたなら、嬉しいな。



「…千代子?」


声がする方に振り向くと、そこには幼なじみがいた。


「…ゆうちゃん?」


田中勇次。親同士が仲良しで、幼い頃からずっと仲良しだった。


「ひさしぶりー!…あれ、でも…オーストラリアに留学してたんじゃなかったっけ?」


「うん、一週間前帰ってきたんだ。」


「えー、そうなんだ!言ってくれたら良かったのにー」


久しぶりに幼なじみに会えて、テンションが上がる私。


「それが、時差ボケでダウンしててさ。
治ったと思ったら友達から電話かかってくるわで…」


「あははー。人気者だねえ」


ニコニコと、ゆうちゃんの話を聞く。


「なあ、千代子。」


「ん?」


「…ううん、なんでもない。また今度電話する!」


「…?うん?」


そう言って去って行くゆうちゃん。
でも、そっかー。帰ってきてたんだあ。


私は嬉しくなって、スキップで家に帰った。
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