ビターチョコレート
私は会話に身が入らず、ただ相槌を打つだけだった。
「それでは、あとは若いお二人で…」
ドラマとかでよく聞く、おきまりの台詞が出てきた。
その後、お父様とゆうちゃんの両親はこの部屋を出て行った。
出て行ったあと、私達に会話は無く、しばらくして、ゆうちゃんが席を立った。
「じゃ、池の方回ろうか?千代子」
部屋から見える、大きな池。
きっと、気を使ってくれたのだろう。
「う…うん。」
返事をし、池の方まで歩いた。
沈黙のまま、歩きながら考えていた。
ゆうちゃんは…お見合いの事…どう思ってるんだろ…。
私がそう思ってると、ゆうちゃんは口を開いた。
「今日の事…聞かされてなかったんだろ?」
突然話しかけられ、ワンテンポ遅れて返事をした。
「え?なんで分かったの?」
「態度に出すぎ。あたふたしてたじゃん。」
そう言ってゆうちゃんは笑った。
「そうなの…。お父様ったら強引なんだから」
歩きにくい着物で、池の周りを歩いていく。