陽だまりの午後 ~れおん・マロン・ポン太 ある1日のお話~
もう、薄闇に近い夕暮れになっていた。
明かりをつける暇もなく、ボクたちはただその部屋でおばあさんを眺め見ている。
おばあさんの表情から、笑顔は消えていた。
シンとした部屋が、とても物悲しい気分に感じられた。
『おじいさんは、とてもおばあさんを愛していたんだね・・・。』
『これからもおじいさんと共に歩いていけるなんて、何だかとても幸せな気持ちになれるわね』
「おじいさんは、今頃どうしてるだろうねぇ・・・」
おばあさんが、ポツリと呟いた。
『きっと、今もおばあさんのそばにいるよ。おばあさんが笑っていられるように、今日もちゃんと想ってくれているんじゃないのかな。』
『なんだか素敵ね』
珍しく、マリネが微笑んだ。
外で、ポツポツと音が聞こえた。
振り返ってみた。
マリネが、小さな声で教えてくれる。
『残念。雨ね』
ボクの声ともつかない言葉に、おばあさんも外に目を向ける。
「あらあら、いつの間に。れおんもマリネも、ちょっと雨宿りしていかなきゃいけなくなっちゃったね。ご主人様たちは、心配しないでいてくれるかな?」
その言葉に、ボクはつい笑ってしまった。
『心配いらないよ。詩織さんは、ボクがちゃんと家に帰れるのをわかっているから。いつ帰ってきてもいいように、窓を開けて待っていてくれているんだ。』
『嘘でしょ?あたしなんて、いつ帰っても鍵がかかっちゃってて、外で声をかけないと入れてくれないのよね』
『キツいね、それ。いつでも開けていてもらえるように、言ってみたら?』
ボクは、少しおかしくて笑った。
『あたし、かわいそう・・・』
『そういえば、おばあさんに聞きたいことがあるんだけど。』
マリネが、少し淋しげな顔で床に寝そべった。
『・・・今度、言ってみる。』
マリネは静かに目を閉じた。