陽だまりの午後 ~れおん・マロン・ポン太 ある1日のお話~
アタシたちのいる場所は、この空の下だった。
でも、今いる本当の場所は、確かにゲージの中で。
その中で毎日の風景を、いつものように眺めているしかなかった。
たかしくんはいつものように、おかしな言動を発しながらのスキンシップ。
えりちゃんのいつもの『いってきます』。
お母さんの優しい笑顔。
出張が多いお父さんの、たまにある会話。
そのいつものある風景が、もしなくなったら。
もし、アタシがいなくなったら、みんなはどうするだろう。
どんなことがあっても、気持ちが一番大事なのかもしれない。
本当は、こうして空を仰いでみたかった。
外はとても開放的で、すべてがどこまでも広がっているような気がして。
大きなものの中に、自分を包み込む何かがあるような、そんな空の下。
カイトの羽根が、大きな音を立てて広がった。
『また、話そうよ。いつもの場所にいるからさ』
アタシはその羽根が舞うのを見ながら、一言つぶやいた。
『またね』
微笑んで、カイトは大きな羽根を広げてその場を後にした。
少し生暖かい風が吹いた。
もうすぐ、夏がやってくる。
心の中で、カイトの声が聞こえた。
―――ゲージの中でも、マロンはもう一人じゃないよ。
カイトの小さくなった姿を眺めながら、アタシは少し微笑んだ。
『ありがとう』―――。