陽だまりの午後 ~れおん・マロン・ポン太 ある1日のお話~
オレがここに来たのはいつだっただろう。
小さな頃のことなんてもう忘れてしまった。
だけど、初めての思いとして、ここに来た瞬間の出来事ははっきりと覚えている。
『ここがキミの居場所だよ。仲良くしようね』
佑衣の言葉に少しの緊張を覚えたけど、ワクワクする気持ちはもしかしたらなかったかもしれない。
すべてのことが初めてで、見るものすべてが佑衣のいる場所であったこと、それがオレにとっての日常となるものであることを感じていけた。
見るものが新鮮であったこと。
様々な物を興味深く眺めているのを、楽しそうに佑衣が見ていたこと。
初めてのご飯。
初めて見るその物を、訝しげに眺めては恐る恐る口にしてみたこと。
初めてのお風呂。
プルプル震えるオレに、佑衣がこともあろうに普通にシャワーを浴びせかけてきたこと。
―――何するんだよ。
『キレイにしないとね。気持ちいいでしょ?』
―――・・・まあ、お湯加減は普通。
いつもひとりでいた感じはする。
確かに、佑衣は毎日が忙しい。
仕事帰りだとか残業だとかは、毎日あったかもしれない。
その中で、いつもオレは佑衣が帰ってくることを心待ちにしていたのかもしれない。