陽だまりの午後 ~れおん・マロン・ポン太 ある1日のお話~
ある日、オレは気が遠くなるほどの眩暈に襲われたんだよね。
何が何だか、わけがわからないままにオレはその場で倒れた。
意識を失うとは、このことか。
その時のオレには、それさえも思うことはできなかったかもしれない。
高熱を出した。
ありふれた毎日は一転。
佑衣の心配そうな顔つきばかりが目について、オレは自分を意識することすら忘れてしまうほどだった。
―――・・・オレ、もしかしたら死んじゃう?
そう思えたことは確か。
だけど、佑衣の涙であるとか、オレのその時の容体を思えば、もしかしたらその危険性さえもオレは素直に感じとっていたのかもしれない。
―――ねえ、オレ死ぬの?
佑衣は何も言わなかった。
オレの頭をなでては、いつも声をかけてくれる。
『何も心配しなくていいからね。今日は一緒に寝ようか』
オレの気持ちがフッと軽くなったのは、その時だったのかもしれない。
オレは大丈夫。
この場所でいられる。
死を意識するなんて、ありふれたものの中にはなかったはずだよ。
オレは大丈夫。
佑衣と共に、また毎日を送れるんだよ、きっと。
今日は、ゆっくり休んでみよう。
―――ちゃんと隣でいてよね。
オレの言葉を感じとったのか、佑衣は少し微笑んだ。
『明日になったら、またお薬飲もうね』