陽だまりの午後 ~れおん・マロン・ポン太 ある1日のお話~
そのことは、ずっとオレの胸の内に収められているんだよね。
もしかしたら、この一生においてのオレのすべてがこの時の出来事だったのかもしれない。
佑衣がいてくれたから、オレは生きられたのかもしれない。
次の朝、オレは苦しんだのが嘘のようにありふれた毎日の始まりをいつものように感じることができた。
熱は下がった。
佑衣が喜んだ。
苦いお薬を飲んだ。
オレの顔が歪む。
―――・・・もう、いいじゃない?熱も下がったことだしさ。これ、どう考えても無理だよ。
『朝ご飯、何にしよう?まだ、ミルクがいいよね』
―――何でもいいけど、オレはもう大丈夫だよ。
まだ、ここへ来て10カ月目のことだった。
ミルクはもう卒業したはずなのに、なんでまだミルク?
まあ、いろいろあるよ。
でも、もしかしたらこれからの毎日、佑衣に対してはいろんな思いとしてありふれた生活の意味を知っていくんだろうと思う。
それを胸に秘めたものとして、たぶん佑衣に対してできることをずっと考えていくのかもしれない。
オレはあまりにも無力すぎるのかもしれない。
だって、オレはご主人様である佑衣に対して、ちゃんとお礼ができる限りに毎日を過ごせることをずっと望んでいたからこそ、何かをしてあげたいと思えた。
だけど、何がしてあげられる?
無力な思いだった。
でも、できないとも限らない。
何かを思えることの喜びとして、佑衣への気持ちを常に考えることができる。
それが日々の中で、できる範囲内のことであったのかもしれない。
いろんな思いがある。
佑衣を思うということは、そういうことだったのかもしれないよね。