陽だまりの午後 ~れおん・マロン・ポン太 ある1日のお話~
『お待たせ。今日は少し多めに入れといたよ』

手早くご飯の入った容器をラグの上に置くと、佑衣はそこから足早に立ち去った。

―――確かに、今日はいつもより多めだね。まあ、多いに越したことはないけど。

食べ始めるより先に、オレはさっきいた出窓の隅を眺めた。

いつもと少し違った風景だった。

また、来るだろうか。

来たら、次は話すことができるだろうか。

また、来れたらいいね。

話す内容を考えておくのもいいかもしれないね。


今日は、初夏にありがちな少し涼しい一日の始まりになった。

ご飯を食べながら、ふと思う。

―――今日は、どこへ行くんだろ。海とか言ったよね。できれば、少し遠くへ行ってみてもいいような気もしないでもないよね。

毎日の生活が、そんな何気ない場面での幸せになっていることに、少しの喜びとしてそこで実感ができたりする。

それが、オレの佑衣への気持ちにつながっていくその場面であったのかもしれない。

いつも、何かは考えていたりする。

それがいつも佑衣に対する何かであったりもする。

だけど、日々はそのようにして繰り返されていくのかもしれないよね。

何かを思えるから日々があって、誰かのために何かを考えていける。

だから、いつもの日常があるのかもしれない。

光溢れる青空を、いつも眺めていた。

そこにはいったい何があるの?

オレ、そこに行けるの?

もし、行けるんだったら、佑衣も一緒に連れてってもいいかな?

オレ、佑衣と一緒に行きたいんだよね。

きっと、限りない毎日を生きる二人であったんだよね。

だから、限り尽くすんであれば、きっとそこには佑衣がいるんだと思うんだよ。

いつも、そばにいてくれるのが佑衣であるように、いつも佑衣と一緒にいたのがオレであると言えるんだと思う。

だから、その日がもし来るんであれば、その時は言って。

オレ、佑衣と行くからさ。

うん、確かにオレは今日も生きてる。

『ほら、ポン太。こぼしてるよ』

―――わかってるよ、あまり言うなよ。

そんな日常を、ありふれたように何気なく今感じることができている。

ふと、窓の外で雀が鳴いた。

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