ヴァンパイアじゃダメですか?
~第1章 君を探して~
~第1章 君を探して~
教室がザワついている。
教師らしき女が、黒板に白い字を走らせた。
『唐嶋魁斗(からしまかいと)』
大きく、しかし丁寧な字が黒板に白く栄える。
「はい、静かに。今日からみんなの仲間になる、唐嶋魁斗君よ。仲良くしてあげてね。さ、唐嶋君、自己紹介を」
言われ、魁斗は立っていた位置から少しだけ前へ移動する。
「唐嶋魁斗です。よろしくお願いします」
整った顔立ちに、艶やかな黒髪、スラリとした長身な美少年を前に、教室中が黄色い声に包まれた。
魁斗は少しうんざりした様子で、誰にも分からないようなため息を吐く。
教師に言われた席へ移動した瞬間、魁斗の鼓動が強く波打った。
正しく言えば、鼓動というより、血が反応したと言うべきだろうか。
―――ドクンッ……
何故こんなにも、血が騒ぐのか。
それは、彼の探している者がいるから。
こんなに早く、こんなに近くにいるとは。
予想外な展開に、魁斗は決して悪くない目を隠すようにかけている眼鏡を上げながら、微かに口の端を上げて笑った。
――見つけた……俺の……
一刻も早くその者に自分を刻み込む事を望む魁斗は、先走る思いを堪える事に必死だった。
「唐嶋君、あたし城野未琴。よろしくね」
席に着いた魁斗に、隣の席の女子生徒『城野未琴(じょうのみこと)』が声をかける。
一瞬戸惑った魁斗だが、すぐに表情を柔らかいものに変えた。
「よろしくお願いします」
作り笑顔を向け、優等生を作り上げる。
そんな事を知るはずもない未琴は、明るい笑顔を返して手を差し出す。
「え?」