ヴァンパイアじゃダメですか?
一瞬、訳が分からず、魁斗は首を傾げる。

「握手。ほら、仲良くなるにはスキンシップも必要じゃない?」

おかしな女だと思った。

いくら同じクラスで、これから仲良くするからといって、初対面の人間に対して対応が軽過ぎるのではなかろうか。

魁斗はそう思いながらも、拒む理由が見つからないのと、せっかく作り上げようとしている“優しい優等生”の印象を悪くするわけにはいかないので、答える事にした。


―――ド……クンッ!!


今までとは違い、激しく血が騒いだ。

「っ……」

「唐嶋君? どうかした? 具合でも悪い?」

「いや……何でも、ないよ」

心配そうに言う未琴に、魁斗は軽く返事を返した。


―――いた……


魁斗は確信した。

自分が探している者が、未琴である事を。

こんなに血が騒ぐのはいつぶりだろう。やはり、相性がいいモノは一部が触れるだけでも心地良い。

早く、早くという気持ちを抑えつつ、魁斗は平常心を装っていた。

そんな魁斗に味方したのか、次の授業は自習。

早速魁斗は未琴に声をかけた。

「城野さん、少し時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「うん、いいよ。どうしたの?」

「図書室の場所を教えて頂きたいのですが」

「じゃ、案内してあげる。本当は教室にいなきゃいけないんだけどね」

悪戯に笑った未琴は、魁斗の手を取り、教室を出る。

魁斗は手を引かれるがまま、その後について歩く。

その時、魁斗が笑った事は誰も知るはずがなかった。
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