不機嫌な彼



わかってるんだよ…


先輩は怖い人なんかじゃない


誤解されやすくて


無口で怖そうに見えるだけ


わかっていた


なにかしたらいつも送ってくれた


先輩の家があたしの家と逆方向だってことも


辞書を使うのにあたしに貸してくれたことも


なんでこんなことしてくれる?


なんで?






「…ごめんな」





先輩、もう謝らないで


先輩は悪くない


なのに…声が出なかった


先輩はなにも悪くないよって言いたいのに





「…吉岡…」




あたしの目からは大粒の涙が流れていた







「…吉岡…」





違う


怖いとかじゃない


違うの






< 44 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop