不機嫌な彼
わかってるんだよ…
先輩は怖い人なんかじゃない
誤解されやすくて
無口で怖そうに見えるだけ
わかっていた
なにかしたらいつも送ってくれた
先輩の家があたしの家と逆方向だってことも
辞書を使うのにあたしに貸してくれたことも
なんでこんなことしてくれる?
なんで?
「…ごめんな」
先輩、もう謝らないで
先輩は悪くない
なのに…声が出なかった
先輩はなにも悪くないよって言いたいのに
「…吉岡…」
あたしの目からは大粒の涙が流れていた
「…吉岡…」
違う
怖いとかじゃない
違うの