ふたりの願い
少したって
やっと僕の存在に気付いたのか
「ごめんね―」
と いつもどおり 笑っていた
すごく自然な
だけど そのぶん余計に哀しそうだった
みたくなかった
だから わざと話を変えたんだ
「満月 綺麗だな」
「そうだね。
きっと この世界で唯一綺麗なものだと思うの」
優しい微笑みだった
嬉しかった
それに安心した
だけど 認めたくなかった
沈黙のあと
小さな声で お姫様が話し始めた
「…ねえ
知ってる?
ある絵本のお話なんだけど
満月の夜 願いを月に托すと
願いが叶うって
ほんと、なのかな…?
…王子様は どう思う?」