ふたりの願い
「丘だあ――
ほんと絵本のとおりだわ
すごく嬉しいっ!!!」
えへへ―と
寝転がるお姫様は
言葉通り 嬉しくてたまらないらしく
満面の笑みで空を眺めていた。
ふて腐れてた僕も
あまりのお姫様の悪気のカケラもない様子と
「ほんとにお姫様?」なんて聞きたくなるほど
掛け離れたおてんばぶりに驚いてて
しばらく
目をぱちぱちさせていたが
「なんなんだ
無理矢理つれてきて
それに 忠告しとくけれど
僕らは形上の婚約者なんだから
僕はキミと一緒に頑張っていこうなんて思っていない。
これからは別々に生活するのだから 僕を独りにさせてくれ」
動きを止めたお姫様
たぶん冷たい言葉だと思う
それでも あまりにも掛け離れてる 僕とお姫様では
最初に強く 釘をさしとかなければ
…後悔すると わかってたから。
「王子様の希望はわかったよ
独りになりたいんだよね。
だけど あたしの希望も聞いてね。
あたしは王子様とお喋りしたいな― だからさ
夜は丘にきてよ
そのかわり 昼は王子様のとこには行かないからさ。」
ニコッと笑うお姫様は
王子様の冷たい声など
すこしも怖がっていなかった。
それに ぽわ―んとしてそうなのに 僕より上手だった
Yesしか答えはなかったから
「わかったよ」
といい、きっと満足げにニコニコしてるだろう、お姫様の顔は見ずに 丘をおりてった。
イメージしてたお姫様と
全然ちがくて
いままでとちがくて
簡単にペースを崩されてしまう
こんなの初めてで
なんだか自分でも
どうしたらいいか わからなかった。