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靴を変え、琴菜の手を握ったまま駅へと向かい、電車に乗り込んだ。
「で、どうした?」
駅までの道程はほとんど口を開かなかった。
「…え?」
自覚なしか…。
こーゆー時はヤバイ。経験上わかっていた。
「元気ない。いつもはもっとうるさいだろ?」
少しからかってみる。
「煩くないもん!えっと……」
言葉に詰まるのを見て追求するのをやめる。
「いい、後で聞く」
頭を撫でてやると、ほっとしたような顔をした。
また何か抱え込んでいるらしい。
電車から降り駐輪場へ行く。
「あ、ごめんね鞄…」
ずっと鞄を持っていたことに気付く。
「いいよべつに」
鞄を受け取ろうと伸ばされた腕を避け、そのまま自転車の籠に入れた。
「でも自転車の鍵、鞄の中…」