A+α
真っ青な顔色で何を言ってるのかコイツは…。
「漕げねぇだろ?体調悪いのに。ほら、後ろ乗ってしっかりつかまれ」
「――ありがと」
腰に回された腕に力が込もった。背中が暖かい。
熱があるんじゃないか…。と、考えつつも 無言で自転車を走らせていると、腰に回された腕から力が抜ける。
疑問に思い後ろを向こうとすると背中にかかる重みが増した。
「琴菜?」
返事はない。
――まさか……
「…寝てる?」
やはり返事はなかった。
思わず苦笑が洩れる。
落ちないように少しスピードを落として走り続けた。
更に15分程経つと家に着いた。
ブレーキをかけ、先程よりも強めに声をかけると、流石に目覚めたらしい。
「~っごめん、寝てた」
「寝るとは思わなかった」
今更ながら笑いがこみあげてくる。
寝起きで機嫌が悪いのか無言で背中を叩かれた。
『ただいま~』
玄関のドアを開け、声をかける。