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「康太、そろそろ琴菜ちゃん起こしてきて~」
菜月が声をかけたのは、紫苑と玲音が半分程食べてからだった。
「わかった。そういや今日父さんは?」
いつもの帰宅時間を15分程過ぎている。
「え~っと、今日はたしか遅くなるって言ってたかな」
「へぇ…」
適当に返事をして階段を上っていった。
「起きてた?」
部屋のドアを開けると、ベットで体を起こしている琴菜が目に入った。
「んー?今…」
顔色はさっきより大分よくなっていたが、完全とは言えない。
「メシ出来たってさ。食えそう?」
「うん…。食べたい」
その返事に安心する。
食欲はあるみたいだから、大丈夫だろうと。
部屋を出て階段を2、3段降りたところで振り向くと琴菜が急に座りこんだ。
「琴菜?おい!大丈夫か!?」
慌てて声をかける。
「気持ち悪い…」
その声も微かで聞き取りにくい。
背中を擦ってやると、深く息を吸った。
顔を窺えば、真っ青で震えている。
「………と………れたっ」
「え…?なに」
ハッキリ聞こえなく聞き返す。
「……突き、落とされた」