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――さて、どうしよう…。
いくら秋になったばかりとは言うもののこのまま寝たら寒いだろう。
しかも琴菜はまだ制服を着たままだった。
「…運ぶか」
適度な重さと温もりを手離すのは惜しいが、風邪をひかれたら困る。
そしてそろそろ理性も限界に近い。
そう思い、琴菜の体を離そうと決め、手始めにシャツを握っている右手首を掴んだ。
「―――っ痛!」
「うわっ!?起こしたか?」
突然目を開け、小さく悲鳴をあげた琴菜に驚く。
「って、お前手首腫れてんじゃん!怪我無いって言っただろ?!」
慌ててシャツの袖を捲って見ると、真っ赤に腫れていた。
普段の華奢な腕を知っているから余計に酷く見える。
「……ふぇ…痛い」
止まっていた涙が再び盛り上がったが、こぼれることはなかった。
「馬鹿当たり前だろ!?こんだけ腫れてたら。ほら、手当てしにいくぞ」