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「ん…。終わった」

湿布を貼った後、包帯を丁寧に巻いていった。

ふと、顔を上げると少し琴菜の顔が赤い。
熱でもあるのだろうか。

「…?どうしたんだ琴菜」

「な、なんでもないよ?あの、えっと包帯ありがとう」


「あぁ。いつもと逆だな」
至近距離でお礼を言われて赤面しそうになるのを堪え、小さく笑った。
いつもは琴菜に手当てをされる。自分でも不思議な程生傷が絶えないのだ。


「琴菜?眉間に皺…。どうした?」

ボーっとなにやら考えていたらしい琴菜の眉間に皺がよった。
指摘すると、

「ちょっと頭痛くて…」

「今日は泊まってけ。夏香さんあと一時間は帰って来ないだろ?」

嘘だとわかったが敢えて言わないでおいた。

「うん…。紫苑と玲音はどうしよう?」

「まだ今9時だし大丈夫だろ。夏香さん帰って来たら一緒に帰ると思うけど、帰って来なかったら泊まればいい」


「いつもありがとうございます」

琴菜が嬉しそうに笑った。
「いえいえ、どういたしまして」

と返す。
顔を見合わせお互い吹き出した。


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