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プリントや教科書の類いがごちゃごちゃになった監督兼顧問の机に鍵を置く。
机の持ち主の姿はなかった。
テスト採点をしているのだろうか?
職員室から出ると、海示と話し込んでいる後ろ姿が目に入った。
背が海示の肩までしかなく、少し茶色っぽいさらさらな髪。
「…琴菜」
よく見慣れた姿に声をかけるついでに鼻の下を伸ばしている海示を一発殴る。
「あ、部活行けなくてごめんね」
大きな瞳を曇らせ申し訳なさそうに謝る琴菜の頭を撫でた。
物心つく前から一緒にいたからか、傍にいるのが当たり前の存在だ。
「いいよ。たいしたことやってないから」
「ちょっとお二人さん!?最近俺の扱い酷くなってない?海梨ちゃんもだけど…」
海梨ちゃんとは海示が中学時代から片思いしている相手だ。
だから海示はわりとモテるのに、彼女がいない。
「海示君。多分海梨のは愛情表現だよ」
琴菜が柔らかく笑った。
「たしかにそーかも」