王国ファンタジア【流浪の民】
 ベリルは数歩、近づいて机をのぞき込む。

「旅をしているので薬草には詳しくなったよ」

「! 旅? なんの民なんだ?」と、バジル。
「流浪の民だ」
「! へえ」

 グレードはベリルを見て、つぶやくように問いかけた。

「そういえば……流浪の民って特徴が無いですよね」

「ん。拾い子を育てるからね。私もその1人だが」

「「!」」

笑って言ったベリルに、2人は驚く。

「気にはしてないよ。拾われただけマシな方だ」

「そうですね」

どう返していいものか、グレードはそんな言葉しか出なかった。

「……」

 でも、この人……グレードはベリルの雰囲気に、首をかしげる。

 そんなグレードにバジルは怪訝な表情を浮かべた。

「どうした? グレード」
「いや……なんでもありません」
< 106 / 246 >

この作品をシェア

pagetop