王国ファンタジア【流浪の民】
 普通の人間とも、特殊な民族とも違う。癒しの民が感じられる感覚からは、ベリルの正体はうかがい知れなかった。

「少し、頼まれて欲しいのだが」
「! なんですか?」

 声をかけられ、グレードはハッとする。

「ドラゴンの炎のブレス(息)。それに対抗しうるには、普通の薬では無理だろう」

「!」

 グレードは、ベリルの言葉に肩を落とした。

「ええ、オレもそれを考えていました」

 苦い顔をするグレード。ベリルはなだめるように口を開いた。

「あの炎のブレスは物理的なものだけではなく、別の力も感じられる。お前たちの魔力に、これが助けになるかどうか」

「?」

 ベリルがグレードに見せたものは……

「! アミュレット(護符)?」

 それはペンダントトップだった。シンプルにあしらわれたチャームに、エメラルドの石がはめ込まれている。

「土台はミスリルだ」
「! ミスリル。あの……」
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