王国ファンタジア【流浪の民】
 少しの警戒感も示さないベリルに、銀色の髪をした青年は赤い瞳を細める。

 得体の知れない相手だろうに……どうしてこうも落ち着いていられる?

 本人がそう意識するように、出会った人間たちは彼を見てその異常な雰囲気に尻込みしたり、攻撃をしかけてくる者がいた。

「!」

“ピキンッ”

「うっ」

 ベリルは短剣を素早く抜き、背後にいる人影の首元に突きつける。

 そこには少女。突きつけられた切っ先に息を呑む。

「むきだしの殺気は解りやすい」

 静かに言って短剣を仕舞う。

「驚いたな。邪鬼にまで気付くとは」
「気の流れで解る」
「……」

 少女は両目を閉じたまま、ベリルに顔を向け青年の側に寄った。

 その両目はあえて閉じているのだと、ベリルは理解した。
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