王国ファンタジア【流浪の民】
 波旬はベリルをじっと見据えた。

 大した力は持っていないのに、どうしてこうも大きな態度がとれるのだ?

「力は強いだけでは意味が無い、受け流される事も考えるべきではないかね?」

「!」

 ベリルの言葉にハッとする。相手の心が読めるのか?

「相手の表情や仕草で、何を考えているのか見当をつけられるだけだ」

「大した特技だな」

 波旬は嫌味を込めて笑う。

「魔族については少し聞きかじった程度だが……姿は人間とは似つかないと聞いていた」

「波旬は人間の血も混ざっているんだ」
「!」

 邪鬼がわざわざ説明した事に、波旬はギロリと睨みを利かせた。

「もう面倒だから殺しちゃおうよ」

 邪鬼がベリルを見て言った。

「……」

 波旬はしばらくベリルを見つめたあと、

「……いや」
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