王国ファンタジア【流浪の民】
「うお? マジに美味いの?」

 エナの表情に、マルタも1口含む。

「うおっマジ美味いっすよ! ベリルさん、お店なんて開いたらどうですか?」

「お前……口数多い」

 呆れたユリエスがぼそりとつぶやく。

「邪気と言ったか。君は妖精かな?」
「そう」

 ベリルの問いかけに、彼の皿の上にあるパイに目を向けながらエナは応えた。

 羽を隠すためにマントを羽織っているのか。それに、ベリルは納得する。

「んな!? あっさり暴露していいんか?」

 ユリエスが驚いて声を張り上げた。

「討伐隊の仲間よ、隠していられないでしょ」

 ベリルが自分のパイを差し出すのを受け取りながら、エナは淡々と言った。

「妖精は悪意を感じ取る能力があると聞いていたが、なるほど」

 片肘をつき、その手に頭を乗せてベリルは優しい笑みをエナに向ける。

「もしかして物知り?」

 マルタがフォークを噛みながら質問する。

「旅をしていると自然と耳に入ってくるんだよ」

 言って足を組む。

「ベリルさんはどういった民?」

 マルタが問いかける。

「流浪の民と呼ばれている」
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