王国ファンタジア【流浪の民】
「流浪の民って大したこと無いんだな」
「! キル……」
「そうだな。確かに強くはないよ」

「「!」」

 しれっと応えたベリルに、2人は驚く。

「じゃあ、手合わせ願えませんか」
「キル!?」

 何故だか、キルテはベリルと戦いたくて仕方がなかった。

 好戦的な民ではあるが、誰かれ構わずケンカをふっかけるほどではない。

 しかしキルテは、こんなにも“戦ってみたい”。と、思ったのは初めてだった。

「別にかまわんが」
「よろしく」

 口の端をつり上げるキルテを見て、エークは後ろに下がった。

 向かい合うベリルとキルテ。少年は、彼の目に苛立ちを覚えたのだ。

 さらりと見つめられた銀色の髪の赤い一房(ひとふさ)。

 ベリルはただ、何の民かを確認しただけだというのに。
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