王国ファンタジア【流浪の民】
「幾ら気が立っていたからって、八つ当たりして斬りつけた事は……すまないと思ってる」

 それを聞いたベリルは、柔らかな笑顔をドルメックに向けた。

「そうか、あれはお前の母だったのか」

 セシエルから受け取ったカップを手に取りひとくち、口に含む。

「優しい気を放っていた」
「! 気……?」

 興味ありげに目を向けたドルメックに、ベリルは静かな声で説明した。

「そもそも、あれは核石だと言われて受け取ったものだ。その者はそれしか持っていなく、私への報酬をそれでしか払えなかった」

「報酬……」

 その言葉に、ドルメックは苦い顔になる。仲間が物扱いされ、取引されている事実を噛みしめる。

「まあ、そいつはそれを隠していたが私が見つけてそれで払えと言ったのだがね」

「! え?」
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