王国ファンタジア【流浪の民】
「……っ」

　セシエルは口をパクパクさせてドラゴンを指さしながらベリルを見た。

「しゃ、喋った！」
「本人に聞くって言ったろ」

「あれ本当だったの!?　冗談かと思ってたよ……」

｛地をはい回る地虫ども。我を倒そうなどとは片腹痛い！｝

　その怒号に、兵士たちも戦士たちも体が強ばった。

「こんなの……どうやって倒すんだよ」

　アウルがドラゴンを見上げてつぶやいた。

　それは、誰もが恐怖する鋭い眼差しを人間たちに向け勝ち誇ったように吐息を漏らす。

　低く、くぐもった声に兵士たちの足はすくみ、もはやベリルの指示に従えるかどうか疑問だった。

「これほどの威圧感とは……」

　波旬（はじゅん）は、その巨体を見上げる。

　誰１人、彼の姿をとらえる事は出来ないが波旬はドラゴンの背後の兵士たちの中にいた。

「さすがにこれは……反則やで」

　クラウンが薄笑いを浮かべてぼそりと言った。
< 166 / 246 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop