王国ファンタジア【流浪の民】
「ひ、ひーくん……おっきいねぇ」
「お……おう。ちょっとデカイかな……」

 刀を持つ手が、小刻みに震える。奥歯を噛みしめた。

 倒してやる……倒してやるんだ。

 いつもの威勢は、ドラゴンには通用しそうもない。

「!」

 ベリルは、そんな刀を持つヒイロウの手に静かに手を添えた。

「落ち着け。まだ、お前の力を発揮する時ではない」

「う」

 手の震えが収まる。ヒイロウの気の収まりを確認したベリルはニコリと笑いかけ、ドラゴンに目を移した。

「ヤツは混沌の意志を持つドラゴンだ」

 ベリルが静かに語り始める。破壊のみを求め、憎しみと怒りに満ちている……

「何故、そうまで破壊を繰り返す。何がお前をそうさせる」

 その問いかけに、ドラゴンはカッと目を見開いてベリルに怒鳴った。

{黙れ! 傀儡(かいらい)がっ}
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