王国ファンタジア【流浪の民】
 大きな地響きを上げて、ドラゴンは地面に横たわる。

「殺せ!」
「やっちまえ!」

 それに、一斉に群がる兵士たち。

「やめろ!」

 ベリルがそれを制止した。ドラゴンの頭部に歩み寄り、目を伏せる。

「消えゆく命を無駄に傷つける事はない」
「しかしこいつがした事は……っ」

 ギロリと睨み付けられ、兵士はその後の言葉が出なかった。

{ウ、ウゥ}
「名は?」

{好きに呼ぶがいい}
「ディナス」

{!}

 驚くドラゴンに、ベリルは小さく笑った。

「私を育ててくれた者の名だ」

 それを聞くと、ドラゴンは静かに目を閉じて口を開いた。

{我は……この世界が好きだった……}
「!」
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