王国ファンタジア【流浪の民】
「……」

 ベリルはエメラルドの瞳を曇らせ、ディナスに静かに問いかける。

「何故……気付かなかった?」
{! なんだと?}

 苦い顔をしてドラゴンを見つめる。

「ドラゴンのお前ですら、忘れてしまう事なのか?」

{?}

 ディナスは愁いを帯びたベリルの瞳を見つめる。

「この世界は生きる事を許してくれている。人もまた、この世界のモノであるという事を……」

{!?}

 ドラゴンの目が大きく見開かれた。

 この世界は、長い時間に渡って徐々に創られたもの。人の歴史はまだ浅い。

「何故、見守る事が出来なかった」

 早急に結果を出しすぎた。

「人は、過去の過ちを正そうとする。そして正す事が出来る。何故それに気付いてはくれなかった」

{……我は間違っていたのか}
< 194 / 246 >

この作品をシェア

pagetop