王国ファンタジア【流浪の民】
 ドルメックはベリルの入っていく建物に目を見開いた。

「馬鹿な……どうして今更」

 そこは王宮の入り口。ベリルはためらいもせずに中に入っていった。

 セシエルの不安の声が脳裏を過ぎる。

「……」

 ドルメックは辺りをキョロキョロと見回し誰もいない事を確認すると、建物に向かって駆け出した。

 警戒して忍び込むと、玉座の置かれている部屋に向かう。

 ここに来るなら、きっとあそこに行くハズだ。

 ドルメックはそう予想して、見つからないように忍び足で王の間を目指す。

「!」

 いた……気配を出来る限り消して近づく。

 玉座に座る国王に、その横には1人の男。

 そして、ひょろ長い不健康そうな男がベリルを嬉しそうに眺めていた。

 ベリルは国王の前に立って、反応を待っているようだった。
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