王国ファンタジア【流浪の民】
「王に謁見したあと呼び戻され、討伐が成功したあかつきには騎士団長か近衛隊長にならないかと誘われた」

 そしてドラゴン、ディナスの言葉。

「私の事に気付いたうえでの勧誘だったと理解した」

「だからって……」

「22年前、手違いで私を見失い彼らは必死に探した事だろう」

 元の場所に戻るだけだ。ベリルは静かにそう言った。

「……」

 ドルメックはベリルの言葉に奥歯を噛みしめる。

 そんな事で、俺が納得するとでも思ってるのかよ。

「……っ」

「どのみち、逃げる事は出来ない。少しの報酬くらい頂いても悪く無いだろう?」

 何かを言い出そうとしたドルメックの言葉をさえぎり、ベリルは小さく笑って言う。

「どうしてっ」

 どうして、許せるんだよ……なんでも許して、あんた自身には何が残るっていうんだ!?
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