王国ファンタジア【流浪の民】
「私の旅は終っても、この記憶は消える事は無い」

 私はそれだけで十分なのだよ。元々、外に出られない存在だったかもしれない。何も知らずにいたかもしれない。

「それはどうかな?」
「!」

 背後からの声、そこにいたのはサレンス。

「くぅ……」

 セツキがベリルの手を優しくなめた。横にはレジィ。

「来(きた)る日のために、君が生まれたとしたら? 君が束縛される意味は無くなるはずだ」

 サレンスは厳しい眼差しをベリルに向けた。

 彼なりに、静かに怒っているらしい。

「そうですよ! ベリルさんが閉じこめられるなんていやです!」

「……」

 3人の視線がベリルを刺す。彼は困ったような笑顔を浮かべて目を伏せた。
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