王国ファンタジア【流浪の民】
 マフィンをもらって帰ろうとしたマルタたちと目が合う。

「!」

 部屋に甘い匂いが充満していて、レインはすぐに部屋を見回した。

「色々とありがとうございま~す!」

 マルタは敬礼して、3人は部屋をあとにする。

「……なんの用だよ」
「まあ座れ」

 言われて、仕方なくイスに腰掛けた。

「!」

 目の前に差し出されるカップとクッキー。

「……いらない」
「毒など入ってないよ」

 その言葉に、レインは一瞬ビクリと反応した。

 ベリルは、この少年の事を知っている訳じゃない。しかし、彼の年相応ならぬ態度に何かに気が付いていた。

 斜め隣に座り、同じ皿のクッキーに手を伸ばす。

「……」

 上品に食べるその姿に、レインはゆっくりとクッキーを手に取った。
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