王国ファンタジア【流浪の民】
「……帰るっ」

 レインは立ち上がった。そんな少年に、ベリルも立ち上がり彼の前にしゃがみ込む。

「!?」

 ベリルはレインを抱きしめた。

「ちょっおい! なんだよっ」
「辛くはなかったか?」

 耳元でささやくように言われて、何も言えなくなった。

 まだ親にしがみついていたい年頃に、レインは1人で生き抜く力を身につけた。

 そうしなければ生きていけなかった……どんなに過酷で、孤独な日々だったろう。

 強すぎる力故に、同じ仲間から命を狙われ。彼を縛り付けるために両親は封印された。

 両親の封印の解除。ドラゴン討伐に参加する事がその条件……

「お前……なんかに、何が解るんだよ」

「そうだな。私にはお前の苦しみを背負う事など出来ない」

「……」

 レインは抱きしめるベリルの腕を、そっと握りしめた。
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