王国ファンタジア【流浪の民】
「で? 何の用だったんだよ」

 レインが落ち着いて問いかける。

「特にない」
「……」

 だめだ、こいつには勝てない……レインはフラリとよろめき頭を抱えた。

「……」

 そして、テーブルの上にあるクッキーに目を向ける。

「あれ、もらっていいか?」
「少し待て」

 ベリルがキッチンに向かい、戻ってきた手には紙袋。

 テーブルの上のクッキーもマフィンと一緒にした。

「ベリルのマフィンも絶品だよ」
「確かに美味かった」

 セシエルはキラキラと輝く笑顔で言い、ドルメックが後に続いた。

「……あ、ありがと」
「え?」

“ダダダッバタン!”

 聞こえるか聞こえないかの声でつぶやかれ、セシエルが聞き返したがレインはすぐに部屋から出て行った。
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