王国ファンタジア【流浪の民】
「俺んちで飯食えよ」

 セシエルは気を取り直すようにベリルに言った。

「子どもたちもお前になついてるしな~」

 ベリルはそれに苦笑いを返す。

「食ってけよ」
「そうだな」

 2人はセシエルの家へと足を向けた。

「! おかえりなさい」
「ただいま」

 セシエルの家の入り口では、彼の妻パドメが薪(まき)を抱えて家に入る処だった。

 栗色の背中までの髪を1つにまとめ、黄緑色の瞳は美しい。

「ベリル。久しぶりね」
「ああ」

 扉を開く。

「ちちうえ~」
「ちちうえ~」

 小さな足音が2つ。小さな影がセシエルに飛びつく。

「やあ、お姫様に王子様。ただいま」

 セシエルは2人の子どもをひょいと抱きかかえた。
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