王国ファンタジア【流浪の民】

食堂にて2

 石畳をしばらく歩き、酒でも飲もうかと再びベリルは食堂に入った。

 ウエイトレスが運んでいる、トレイに置かれた酒のカップに手を伸ばす。

「ベリル? ベリルじゃないか!」
「ん?」

 呼ばれて振り返る。

「ガイオスか」

 笑顔で歩み寄る男に、ベリルは口の端をつり上げた。

 赤い瞳がベリルをやや見下ろす。その閉じられた右目には傷跡。

 細身のベリルとは違い、強さを窺わせる屈強な肉体に浅黒い肌と漆黒の髪が映える。

「お前が選ばれたのか。まあ当然といえば当然か」

「どなた? ガイのお知り合い?」

 後ろからひょこっと顔を出した少女。

「!」

 少女は、その整った顔立ちとエメラルドの瞳に一瞬、驚いた。

「彼女はイース。今の俺の雇い主だ」
「イース。唄詠みの民か」
「この方は?」

 イースは興味津々でベリルを見つめた。
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