スイッチを壊す。

授業の終わりを知らすチャイムが鳴ると、決まって生徒たちは何かのスイッチが入ったように五月蝿くなる。どうやらこれは、高校生になっても変わらないらしい。

「おい宮野、外出ろよ。雪降ってんぞ」

クラスメイトに声をかけられ、冗談を交えた返事を返す。どうやら会話のキャッチボールが上手くいったらしく、彼らが笑う。あとは彼らについていくだけでいいだろう。そうすれば今日の休み時間も、僕は「普通の高校生」というレッテルが貼られる。

これでいい。
これから高校を卒業するまで、最もよい環境で生活ができる。そのために必要な僕を作るのは簡単なことだった。今時の髪型や服装を真似したり、話題のテレビ番組や音楽をチェックする。こうして多少の流行を把握しておけば、大抵は問題ない。後はスイッチを切り替えるタイミングをつかめば、何も言うことはない。


外の空気は透明だった。冬を感じさせる十一月の空気を大きく息を吸い込む。透明な空気が体の中を駈けるのを感じる。その空気の冷たさが、体の濁った部分を洗ってくれるようだった。



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