王国ファンタジア【氷炎の民】
ごとっ。
戸口で音がした。
「なんっ?」
うとうととしていたレジィが半身を起こすが、サレンスは落ち着いたものだ。
「ああ、帰ってきたか」
寝ていろと、レジィに仕草だけで示すと、身軽に立ち上がり外に出る。
雪狼たちのうちのなかでもっとも大きくリーダー格の一頭が待ち受けていた。他の雪狼たちは少し離れて固まっている。
闇夜に緑に光る瞳がサレンスに向けられる。
「セツキ、お帰り。獲物は……、十分獲れたようだな」
セツキと呼ばれた白銀の雪狼の前には、小さな動物の屍骸がある。
どうやらサレンスたちへのお土産のようだ。
「助かるよ」
声を掛けると、セツキは嬉しげに大きな尾をぱたりと振る。
「おいで」
呼ばれると白銀の獣は何のためらいも見せず、サレンスの後に続く。
驚いたのは、レジィの方だ。
人に馴らしてあるとはいえ、雪狼は雪狼だ。
野生の部分は残っている。
人の住居。特に氷炎の民の炎が宿る家の中には彼らは入りたがらない。
しかし、セツキは頭上で燃え盛る炎におびえるふうもなく堂々とした態度でゆったりとあたりを見回し、なぜかレジィの側に身を落ち着けた。
なでてくれと言わんばかりに頭をレジィの膝に乗せる。
「サ、サレンス様」
助けを求めてレジィがサレンスを呼ぶが、彼は斟酌しなかった。
「雪狼は群れを作る獣だ。群れの統率者を見極める目はさすがに確かだな」
「ええっ?」
「この群れを仕切っているのは、おまえだろう」
「そう言われればそうかも」
「そこは否定するところと思うが、まあいい。ちゃんと貢物ももってきてくれたぞ。銀兎だ。明日はご馳走だな」
戸口で音がした。
「なんっ?」
うとうととしていたレジィが半身を起こすが、サレンスは落ち着いたものだ。
「ああ、帰ってきたか」
寝ていろと、レジィに仕草だけで示すと、身軽に立ち上がり外に出る。
雪狼たちのうちのなかでもっとも大きくリーダー格の一頭が待ち受けていた。他の雪狼たちは少し離れて固まっている。
闇夜に緑に光る瞳がサレンスに向けられる。
「セツキ、お帰り。獲物は……、十分獲れたようだな」
セツキと呼ばれた白銀の雪狼の前には、小さな動物の屍骸がある。
どうやらサレンスたちへのお土産のようだ。
「助かるよ」
声を掛けると、セツキは嬉しげに大きな尾をぱたりと振る。
「おいで」
呼ばれると白銀の獣は何のためらいも見せず、サレンスの後に続く。
驚いたのは、レジィの方だ。
人に馴らしてあるとはいえ、雪狼は雪狼だ。
野生の部分は残っている。
人の住居。特に氷炎の民の炎が宿る家の中には彼らは入りたがらない。
しかし、セツキは頭上で燃え盛る炎におびえるふうもなく堂々とした態度でゆったりとあたりを見回し、なぜかレジィの側に身を落ち着けた。
なでてくれと言わんばかりに頭をレジィの膝に乗せる。
「サ、サレンス様」
助けを求めてレジィがサレンスを呼ぶが、彼は斟酌しなかった。
「雪狼は群れを作る獣だ。群れの統率者を見極める目はさすがに確かだな」
「ええっ?」
「この群れを仕切っているのは、おまえだろう」
「そう言われればそうかも」
「そこは否定するところと思うが、まあいい。ちゃんと貢物ももってきてくれたぞ。銀兎だ。明日はご馳走だな」