王国ファンタジア【氷炎の民】
「えーと、設定は流れの傭兵。それで行きましょう」

 そりの後ろに積んだ荷物を物色しながらレジィが言う。

「うん、これとこれかなあ」

 変装できそうなものを選んでいるらしい。

「傭兵ね」
「何か不満でも?」
「いや。で、お前の設定は?」
「僕、僕ですか?」
「傭兵が従者を連れているというのもおかしいだろう」

 サレンスの言葉にレジィは衣服を探す手を止め、しばらく考え込んだが、ぽんと手を打った。

「じゃ、僕はどこかの貴族の御落胤で、跡継ぎが亡くなってしまったので、サレンス様が頼まれて迎えに来た護衛とか」
「どんな設定だ、それは」
「たまには立場を入れ替えてみるのもおもしろいですよ?」
「お前、単に楽しんでないか」

 サレンスのあきれ声に気にする風もなく、レジィは物色を再開しながら返事をする。

「そんなこと……、少しあるかなあ」
「少しか?」
「え? じゃ、いっぱい」
「お前……」

 今度こそ絶句したサレンスにかまわずに、振り向いたレジィは衣装を一そろい差し出してにっこり笑った。

「着替えてくださいね」
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