王国ファンタジア【氷炎の民】
広い屋敷の中にはやはり誰もいなかった。
壁を飾る、豪奢な衣装に身を包んだ人々の肖像画がこの家の持ち主の身分の高さを想像させる。
調度品もすべて上質で造りのよいものばかりだったが、なぜが酷く散らかっていた。
箪笥の引き出しが開けっ放しになっていたり、きらめく宝石が縫い付けられた豪奢なドレスが無造作に床に散乱している。
黒光りするテーブルの上に食べかけのままの銀食器や水晶のグラスが、放置されている。開けっ放しの食料庫には食料を浚えて行ったかのように、袋の口が閉じられていなかったが、それでもまだ大量の食材が残されていた。
ドラゴンの襲撃に怯えたのであろうか、あわてて立ち去ったという風だった。
そんな屋敷の一室をレジィは手早く整えると、今夜の宿とした。
サレンスがつけた暖炉の炎の前にふかふかの寝具を敷いて、レジィは雪狼の腹を枕代わりにして眠っている。
少年の寝顔は、昼間の口八丁手八丁を想像させないほどあどけない。
サレンスはほっとため息をつく。
「お前も苦労するな。ほんとうだったら親に甘えていい年頃だろうに」
彼の言葉に雪狼の頭がもたげられ、薄青の瞳がもの問いたげに向けられる。
それに答えるように銀の髪の若者は言葉をつむぐ。
壁を飾る、豪奢な衣装に身を包んだ人々の肖像画がこの家の持ち主の身分の高さを想像させる。
調度品もすべて上質で造りのよいものばかりだったが、なぜが酷く散らかっていた。
箪笥の引き出しが開けっ放しになっていたり、きらめく宝石が縫い付けられた豪奢なドレスが無造作に床に散乱している。
黒光りするテーブルの上に食べかけのままの銀食器や水晶のグラスが、放置されている。開けっ放しの食料庫には食料を浚えて行ったかのように、袋の口が閉じられていなかったが、それでもまだ大量の食材が残されていた。
ドラゴンの襲撃に怯えたのであろうか、あわてて立ち去ったという風だった。
そんな屋敷の一室をレジィは手早く整えると、今夜の宿とした。
サレンスがつけた暖炉の炎の前にふかふかの寝具を敷いて、レジィは雪狼の腹を枕代わりにして眠っている。
少年の寝顔は、昼間の口八丁手八丁を想像させないほどあどけない。
サレンスはほっとため息をつく。
「お前も苦労するな。ほんとうだったら親に甘えていい年頃だろうに」
彼の言葉に雪狼の頭がもたげられ、薄青の瞳がもの問いたげに向けられる。
それに答えるように銀の髪の若者は言葉をつむぐ。