王国ファンタジア【氷炎の民】
河野 る宇様のとこの外伝でベリルさんとの邂逅後

「サレンス様、あの態度はないでしょう」
「何のことだ?」
「何のことだ? って、ベリルさんが男の人だってわかったら、あからさまにがっかりしているし、それでも女の人じゃないかとかしつこく聞いてるし。氷炎の民の代表として来ているんですよ。恥ずかしい真似はやめて下さい」
「ああ、あれか。ちゃんと反省しているぞ。お姉さんか妹がいるか聞いておけばよかった」
「そういう反省ですか」
「セツキが随分懐いていたよな」
「うおん」
「夜だったし、最初は顔がはっきり見えなかったというのは確かにあるんだが……、お前もちょっとおかしかったし」
「僕? おかしかったですか?」
「自覚なしなら、よけい重症だな。お前、私の力のことすっかりしゃべってしまっただろう。長老会の爺さんたちにあまり力を見せびらかすような真似をさせるなと釘を刺されていたんじゃないのか」
「あっ! そうでした。すみません、失敗しました」
「ひょっとしたらあれかな」
「あれ?」
「匂い」
「匂い? って」
「人間の意識下では認識できなくても、無意識下に影響を与える匂いがあるそうだ。雪狼のセツキは人間より臭覚は鋭敏だ。余計、影響を受けたんだろう。それが先天性のものなのか、後天性のものかはわからないがな」
「他者を惹きつける匂い。老若男女しかも動物まで、とか? じゃ、ベリルさんは歩く惚れ薬ってところですか?」
「その表現は彼に悪いだろう、幾らなんでも。カリスマ性があるとでも言ってやれ」
「へええ。でもそんなこと、よく知ってますね」
「これでも、本はよく読んだからな」
「よく図書館に通っていたそうですね」
「よく知っているじゃないか」
「図書館の司書のお姉さん、綺麗ですものね」
「そうそう綺麗で優しくて……、って、とことん信用していないな、お前」
「はい、女性が絡むとサレンス様を信用してはいけないと言うのが、父の教えでした」
「レジアス、息子に何を教えてたんだ、恨むぞ」
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