王国ファンタジア【氷炎の民】
 氷の家の天井付近では赤い炎が宙に浮かんだままゆるやかに燃え盛っていた。灯りと暖房をかねたそれは、氷炎の民にとっては珍しくもなんともない魔法の炎である。

 干し肉と干し野菜を使ったスープと堅パンという簡単な夕食をすまして、就寝前のひと時、彼らはくつろいでいた。

「なあ、ドラゴンと言うのは何頭いると思う?」

 ふと思いついたかのようにサレンスが口を開いた。
 考え深げな光が氷河色の瞳をよぎる。

「え?」
「あの書状、美辞麗句は並べてあったが、肝心なことは何も書いてなかったな」

 王都よりの書状は魔術で直接に送りつけられてきたものだった。本来なら相応の使者が遣わされるものだろうが、氷炎の民の地があまりに辺境だったからか、単に軽んじられたのか、それともそれほど切迫しているのか。
 どのみちあの書状だけではあまりに情報が少なかった。

「そうですね。要はドラゴンに来襲されて大変だから、だれでもいいから戦力になる奴よこせって感じでしたね」
「レジィ、お前、それ身も蓋もないだろ」
「でも、そういうことでしょう。何か気にかかることでもあるんですか」
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