王国ファンタジア【氷炎の民】
「なんだかな、試されているような感じなんだが」

 レジィは首を傾げた。

「何をですか?」
「民の忠誠と力を。差し詰め、ドラゴンは試金石か」
「へええ、意外です」
「そうか?」
「いえ、そうじゃなくてサレンス様ですよ。何も考えていないんじゃないかと思っていたけど、けっこう考えて……、いたたたたっ」

 サレンスは手を伸ばしてレジィの耳をつまんでいた。

「お前な」
「耳を引っ張らないでくださいよ」

 レジィは両手で耳を押さえ、頬を膨らませる。
 睨むように青い瞳を向ける。

「そこまでわかっているのなら、ご自分の立場もわかっていますよね?」

 問いかけにサレンスは苦笑する。

「まあな、あんまり目立たないほうがいいっていうんだろう。だけどな」
「だけど?」

 サレンスの瞳に悪戯ぽい光が浮かんだ。

「救国の英雄だぞ。女の子にモテモテなんだぞ。これはやっぱり全力でがんばるしかないだろ」

 レジィの期待は見事に裏切られる。深々とため息をつく。

「サレンス様に常識を期待した僕がバカでした。まあ、全力で当たって砕け散らないように気をつけて下さい」
「投げやりだな。どうせなら可愛く<応援してますぅ>とか言えないのか」
「僕が可愛く言ってどうするんですか」
「それもそうだ」
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