愛の楔



「………どういうことだ」


何故現れないんだ。


「今確認しています」


炯は焦りを見せながら携帯でどこかに連絡している。そんな炯の隣で俺は、腕時計に目を向けて時間を確かめる。


………美空は学校終わっただろうか。


迎えにいくと言ったからきっと待っているだろう。


「!それは本当ですか!?」


ふいに炯が声をあげた。
そして、慌てて携帯を切り、俺を見た。


「若っ」

「どうした」

「取引場所が変わっています!」

「…………なんだと?」


ピタリと動きを止める。


「ここではなく、隣の県で行われたそうです」


隣の県?
何故?昨日の今日、そんな変更する時間はなかったはずだ。


「………デマか」


ここであるとわざと流し、俺達を惑わせたと言うことか……しかし、何故だ?


何故、俺達を惑わせる必要があった?


< 126 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop