愛の楔
「………どういうことだ」
何故現れないんだ。
「今確認しています」
炯は焦りを見せながら携帯でどこかに連絡している。そんな炯の隣で俺は、腕時計に目を向けて時間を確かめる。
………美空は学校終わっただろうか。
迎えにいくと言ったからきっと待っているだろう。
「!それは本当ですか!?」
ふいに炯が声をあげた。
そして、慌てて携帯を切り、俺を見た。
「若っ」
「どうした」
「取引場所が変わっています!」
「…………なんだと?」
ピタリと動きを止める。
「ここではなく、隣の県で行われたそうです」
隣の県?
何故?昨日の今日、そんな変更する時間はなかったはずだ。
「………デマか」
ここであるとわざと流し、俺達を惑わせたと言うことか……しかし、何故だ?
何故、俺達を惑わせる必要があった?